養蜂日記

蜜蜂と遠雷

2016年の直木賞と2017年の本屋大賞を受賞した恩田陸さんの小説、蜜蜂と遠雷を読みました。日本で開かれる国際ピアノコンクールに出場するピアニストたちを主人公に入賞から優勝までのストーリーですが、題名の「蜜蜂」は自らはピアノを持たない天才ピアニスト、風間塵(かざまじん)君のお父さんがフランスで転飼養蜂(開花時期と共にミツバチを移動させる養蜂)を営んでいることに起因しています。
単行本の上下巻を合わせると1000ページにもなる大作ですが、予選から本選までの日々に登場するたぐいまれな才能を持つピアニストが選んだ曲は、その殆どがウェブ上で実在する著名ピアニスト演奏でアップされているので、私は自己の読書歴のなかで初めて音楽を聞きながら何の違和感も抵抗もなくあっという間に本を読み終えました。
さて、養蜂家のお父さんのもとたぐいまれな絶対音感だけでなく驚くべきピアノ演奏を披露する15歳の息子、塵君ですが、お父さんの転飼養蜂の詳細はストーリーのなかにはありません。しかしながら、ミツバチのバズ(羽音)そして遠雷の地を揺るがすサウンドに音楽(もちろんクラシック音楽だけでなく音楽すべて)が帰依すべき自然があることをしみじみと感じさせてくれる小説でした。
すでに読まれている方、あるいは映画を観られた方も多いと思います。好きな音楽を聞きながら、就寝前、スプーン一杯のはちみつをいただいて、床に就くのも幸せなひと時かもしれません。

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