君津の山里に響く鹿の声
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき
百人一首で猿丸太夫の作とされる短歌ですが、正直なところ、今から千年以上前に作られた短歌のある情景を現代、君津の山里で体験するとは思っていませんでした。キューン、ヒューンと雄鹿でありながら、アルトよりも高いと思しき彼らの声はズシンとこころに響き、私を古典の世界にいざなったといってもいいと思います。
養蜂場では、ユリノキの葉を食べたり、糞をしたりと見えないところで存在を示していた鹿ですが、彼らの声を聞く時、その存在感がより鮮明になります。
幸いなことに、熊とは違い、彼らはミツバチコミュニティを侵害することはありません。太古の日本ともいえる時代の情景を現代の都市近郊で体験できることに、感謝すべきなのかもしれません。
齊藤克明