冷たい雨が降っています
雨はミツバチにとってうれしくはありません。気温は下がるし、迂闊に出かければ、雨に翅が濡れて巣に戻ることが出来なくなり、働き盛りの彼らはそこで自らの人生にピリオドを打つことになります。彼らにとっては、「恵の雨」ということはなくても、自然の世界では、その秩序を保つために極めて重要な要素ではあります。
その雨ですが、英語で雨が降るは、It rainsですね。日本語では、雨が主語で降るが述語ですが、英語の場合、「それが雨を降らせる」という主語のitとはいったい何でしょうか。雨だけではありません、今日は晴れですは、It is a fine dayですね。英語の場合、日本語のようには、「雨」や「今日」は主語になり得ません。
なぜそうなるのかを西洋から日本にやってきたミツバチ、私たちの養蜂場の勤勉なるアピスメリフェラ種に尋ねたところ、itとは、自然の力、すなわち神であるというのです。それが雨を降らせる、それは晴れである、という「それ」の正体はnatureそのもの、すなわち神の力というわけです。
養蜂場の点検で持ち帰ったいくつかの巣枠には、養蜂場のミツバチよりも少し小型で黄色の縞模様がよりグレイな野生の日本ミツバチがかなりの数でざわついていました。彼らは、雨も天気も八百万の神のなすところだそうです。だから、雨は降るのだとのことです。日本では、「雨」も「天気」も神の意思をもって、生き物のごとくあるのでしょうか。
さて、雨の日は、ミツバチは自宅待機です。すこし湿りがちな意識を鼓舞するため、ミツバチ諸君に登場してもらって日本と欧米の言語文化の違いのある一面を考えてみました。
いつもコラムを読んでいただきありがとうございます。
斉藤克明